03.始まり の 出逢い

昼食を済ませると兄が見計らったように「今から昼寝するから部屋に近づくなよ」と1人のメイドに告げた。部屋に戻って分厚いコートを羽織る。もちろんマフラーと手袋も忘れずに。先に兄が窓から外に出て、次いで私を下ろしてくれた。ちなみにばれないようにベッドには枕を忍ばせてるので、ふんわりと盛り上がっている。裏庭を静かに音を立てずに通って、やっと舗装された路に辿り着いた。舗装されている路なのに雪が積もっているので歩くとザクザクと聞こえて、少しでも油断すると転んでしまいそうだ。
階段を上って行くと広い場所に出た。
カマクラがあったり雪合戦をしている子どもがいる。私はこっちに来て兄以外の子どもを見たことが無い。ニット帽から色々な髪色が覗いていて、「やっぱり自分の住んでた場所じゃないんだ」と再確認して少し胸が締め付けられた。そういう私自身の髪色も兄と同じ金色なのだが。瞳の色だけは何故か黒なのだ。本当に、謎。
…?」
私は無意識に兄と繋いでいた手に力を入れていたらしく、兄が私の顔を覗き込んだ。
「寒いのか?」
ふるふる、と首を降る。
「人、いっぱいいる」
紡いだ言葉は不安定に響いた。
「だってここは広場だからな!も遊ぶだろう?ほら、こっちだ!」
私の答えなんて聞かずに兄は私の手を引く。広場の中央にいる子どもの輪に自然に入って行く。多分、ここが私と兄と違うところだ。私は自分から線を引いて、壁を作る。誰も私のテリトリーに侵入しないように。兄は線なんて、壁なんて、作らない。
「ほら、ッ!ぼぉっとしてるとボールが当たるぞ!」
揺れる金色の髪が、眩しい。
「お前トロイやつだなぁ、名前は?」
「サフィール…」
「鼻水垂れてるぞ」
ポケットに突っ込んでたハンカチを渡すと、その男の子は恥かしそうに笑った。
「あ、ジェイドー!ジェイドってば!ちょっと待って!ジェイド!」
鼻水をずずず、と啜って見上げた先に知り合いが居たらしくさっきから名前を連呼しているのだが、視線の先にいる少年は一切振り向こうとしない。サフィールと名乗った子が、哀れ…に見えてくる。
一緒に歩いていたその少年より少し背の低い少女が少年の腕を握り、振り向かせる。少年はそれはそれは嫌そうにしょうがなく、という風に振り向いた。
一連の出来事を見ていた私と兄はぽかーん、という感じだった。友だちではないのだろうか…?
「ジェイド!」
振り向いた少年に駆け寄る銀色の髪の少年。軽くあしらわれている。
少年と少女が一言二言喋り、そして視線がこちらを向いた。少年の赤い瞳が射抜くようにこちらを見る。とても少年とは思えない冷たい視線だった。
面倒くさそうな少年をこちらに引き摺るようにつれて来た。
「あのね!さっき助けてもらったんだ」
助けた、という大げさなものではないが少年はそう捉えたらしい。
「こっちはジェイド・バルフォア、そしてジェイドの妹のネフリー!そしてこっちは…、あれ名前…?」
そういえば少年の名前は聞いたがこちらは名乗っていない。
「俺はフランツ。そして妹のミアだ。」
…確かに身分を隠している分際だが、よくもすらっとここまで言葉が出るものだなぁ、とうっかり感心してしまった。
「私はネフリー!初めまして、よろしくね!」
この笑顔に兄がノックダウンされたと知るのはあと少し先のことである。

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