「真実というのはとても残酷で、知らない方が幸せなんだ。」

「…残酷」

「そう。とても…。それでも君は知りたいと?今の幸せを崩してでも?」

本来私たちが眠っている時間。カーテンで遮られた窓の隙間から風と共に光が差し込む。それが眩しくて目を細める所作すら、とても優雅だ。だけど、その瞳はいつも悲しげに揺れていて奥にある暗さに触れてみたいと思ってしまう。手を伸ばしたら、切り裂けそうなほどの美しさ。

「知りたいと、思います」

決意をする。きっとこの方のためなら私は死ねるだろう。きっと私が求めていたものをこの方はくれる。真っ直ぐに見つめると、不意に枢さんは視線を逸らした。カーテンで遮られていない窓からは、人間の声がする。

「君は強くなったね。子どもの頃はいつも一条と僕の後ろにいたのに。」

「私はいまも子どもの頃のままです。お祖父様の手の中にいて、拓麻と枢さんに甘えてばかりです。

 …だけど、だから知りたいと思うのです。いつも枢さんは悲しそうで、心から笑ったところなんて私見たこと無い。」

「引き返すことなど出来ないよ」

「承知の上です。」

落とされた微笑。背筋が凍る微笑。首に宛がわれた牙がゆっくりと沈んでゆく。

「…、僕のために生きてくれ」





真実はいつも隙間無く





「おい、」

不機嫌そうな声に振り返る。そこには腕を組んで眉間に皺を寄せ、壁に寄りかかっている英がいた。

「礼を言いにきた」

横を向きながら言われても、全く持って礼にはなっていない。

「お祖父様のことでしょう?あれはお祖父様が悪いもの。 私だって友人がお祖父様に殺されるのを見るのは流石に嫌よ。

それに、英が謝るなんて明日は血の雨ね。それはそれで嬉しいけど。」

「枢様にに礼を言えと言われたんだ!」

「枢さんに言われたから来たの? …そんな義務みたいな謝罪はいらないわ。」

私と英は気が合うのか合わないのか自分でもよく分からない。でも嫌いじゃない、とは思う。だけど、二人だけで会話をすると会話の内容が一致しないのはいつものことだ。

「…なに?」

何時も返ってくるはずの反論がない。

「お前、雰囲気が… あ、いや…、 なんでもない。 礼はちゃんと言ったからな!」

大股で自室へと帰っていく英の後姿を見て、つんでれー!と心の中で叫んだ。


そして、そっと首に手を当て、思い出すように笑った。


(血塗られたモノなど、なんて今更)