カーテンの隙間を縫うように入り込んでくる朝陽が昼を主張していてイライラする。人間の声がさらにそれを助長させて、ベッドに深くもぐりこんだ。何かに、怯えるように。耳を塞いで声にならない悲鳴をあげても誰も助けてくれないし、気付いてくれない。

「大変なんだ今夜うちのお祖父様がここにくる!!!」

寮に響く従兄妹の声に、被っていた布団を剥がして起き上がる。先程掻き毟った所為で髪はぼさぼさだ。私としてはどうでもいいんだけど、従兄妹でありここで保護者となりつつある拓麻が困ったように笑うから人前に出ても可笑しくない程度に髪を撫でた。

「拓麻」

私が声の主のところに言った時には集まっていた人だかり帰った後らしく、拓麻と英と暁しかいなかった。…というか、この部屋は英と暁の部屋だけど。

拓麻は私の声に振り返ると少し困ったように笑った。彼は無意識なんだろうけど、常に微笑もうとしているからこうやって困ったような笑顔は彼を知る人ならよく知っていると思う。こういう顔をしている彼は何かを思案しているとき考え事をしているときで、私はこの顔を見るのが嫌いだ。

すると顔に出ていたらしい。拓麻は着ていたシャツを脱いで私に掛けた。

「髪を整えたのは偉いけど、その格好は合格には出来ないな」

髪にばかり気を取られていたけど、流石にネグリジェは駄目だったのか。英の「お前それでも貴族の娘か」というような視線を感じて、睨み返す。

「暁の格好には問題ないの?」

拓麻の肩越しに上半身裸の暁を指差せば拓麻の声にならない声が響く。

「うちの可愛いの前で!…見ちゃだめだよ、 ほらほら部屋まで送るから、ね」

その態度に暁と英は「始まった…」と言わんばかりに溜息。

拓麻に押される形で二人の部屋を出て、私の部屋へ足を勧める。

「…ねぇ、お祖父様が来るの?」

「あー、うん。今夜ね。」

「拓麻はお祖父様が来るのいやなの?」

「いやって言うか…、あまり枢を煩わせたくないというか…」

そう言ってまた困ったように笑う。

「夜まではまだ時間があるから、寝ておいで。」

「…眠くない。」

拓麻がそっと私の髪を撫でた。

「今回だけだからね」

そう言って向かう先を拓麻の部屋へと変えた。いつだって彼は私に優しい。優しすぎる、くらいに。


まどわされるように、ただ
(貴方に護られてるなんて気付きもせずに)