2年A組、と表記された部屋の扉を開けて周りを見渡し目的の人物を探す。


共有する世界がいつか れないかと


「おお!これはこれは姫!わざわざうちのクラスにどのようなご用件で?」
「た、環くん…」
「今日も君はとても美しい。あの太陽でさえ君の前では光を受けて輝く月のようだ…!」
演劇部に入ったほうがいいんじゃないかと思う。
「えーっと、鏡夜はいる?」
「生憎鏡夜は席を外しているんだ。でも君さえよければ僕が相手を、」
「お前は引っ込んでろ」
首の根っこをひっぱって環くんはポイッと子猫よろしく放り出された。その主はもちろん私の探し人、鏡夜だ。
「珍しいな、が来るなんて」
「来たくて来たんじゃないの」
「だろうな」
くい、と眼鏡を上げた鏡夜の後ろで環くんが教室の隅っこでいじけている。
「あ、環くん!ちょっと鏡夜借りるねー」
きっと聞こえていないだろうけど、念のため声をかける。鏡夜の腕を引っ張って人気のない場所を探す。
高等部南校舎最上階、使われていない第三音楽室。
「ここなら十分だろ?」
何処から出したのか、鏡夜はティーセットを持ってきて私の好きなミルクティーを淹れてくれた。(あ、ロココのティーセットだ)
「ありがと」
「それで、用件は?」
「…今度、誕生日でしょ?何が欲しいのかなと思って、」
「あぁ、そのことか」
誰も居ないこの教室は、とても静かで紅茶を啜る音とカチャカチャと鳴るティーセットの音しか聞こえない。鏡夜は何も言ってくれなくてその様子が少し癪に障る。
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてるさ」
鏡夜が銀色の綺麗な装飾の入ったカップを置いて、私に視線を合わせた。
が贈るものなら文句は言わないだろ」
見当違いの返答だった。正直、鏡夜はもっと的確なアドバイスをしてくれると思っていたのに。
「そっか。じゃ、今日辺りにでも買いに行こうかな」
「あぁ、そうしろ」
「ごめんね、わざわざこんなことのために時間割いてもらって…」 
扉を開けて音楽室を後にした。

「こんなこと、ね」
温度を無くした紅茶を一瞥し、俺は深いため息を付いた。1つ年上の彼女は、いつの間にか少女から大人へと変わっていき俺の入る隙間なんてこれっぽっちも残されていないのだから。
「「鏡夜せんぱーい」」
奥からニヤ付いた顔で出てきた光と馨。ずっと会話を聞いていたのだろう、この双子は。
「「誰ですか、今の?」」
明らかに期待を含んだ目に、薄笑いを浮かべて再び俺は冷えた紅茶を口に含んだ。



「兄貴の婚約者さ」



もうじき、世界が崩壊する音が響くだろう。