「お久しぶりです、拓麻」
ニッコリ笑ってスカートを持ち上げお辞儀をする。目の前に居る拓麻さんはよほど驚いたのか、読んでいた本を落とした。
「…え、?」
「はい」
口をパクパクと動かして、私を指差す。
「なんでここに!?」
「もう拓麻ったら、人を指差さないの!めっ!」
「あ、あぁ、ごめん…って違う!そうじゃなくて、どうしてがここに?」
動揺っぷりがとても面白い。くすくす笑うのを必死で堪えて、拓麻を観察する。暫く会っていないとはいえ、人間と吸血鬼の時間の流れは違う。だから、久しいとは言え彼が変わったところなんて見つからない。だけど、唯一私が知らないのは白を基調とした制服…、見たこともないその服装に若干の嫌悪を覚えつつ、凝視する。
「もしかして黙って家を出てきたとかそう言うんじゃ…?」
「まさか!ちゃんとお祖父様の許可ももらったし、ついでに言うと枢さんの許可ももらったもの」
「…枢の?」
「うん、拓麻が全然連絡くれないって言ったらも黒主学園にくればいいじゃないかって!」
得意そうに話す私とは裏腹に拓麻の顔色はぐんぐん急降下。もう拓麻ったら本当に面白いなぁー
「え、ちょっと待って それってどういう…?」
「聞いた通りよ、私も黒主学園に入るってこと!」
オプションでニッコリと笑顔を付けると、拓麻の顔がさらに引き攣った。



半分は 狂気 、半分は純粋な 悪意 でできています。



「へぇ、そういう経緯だったんすか。…なんていうか、副寮長も苦労してますね」
僕の誕生日パーティーと銘打って優姫ちゃんを呼び出したはいいけど枢は簡単に優姫ちゃんを帰しちゃうし、錐生くんが枢に銃口を向けた所為で空気が悪い。その空気を打破するべく、バースデーケーキを切り分けてみんなに振舞う。最後の一個を架院に渡して、その近くでケーキを食べていると藍堂が目に入った。そういえば、が来た日は僕の誕生日の日だったなと呟いて架院との話に飛躍していった。
物心付く頃お祖父様に手を引かれてやってきた、それからは兄弟のように育った。といっても僕等は従兄妹なんだけど。僕が黒主学園に入るといったときにはしばらく口を利いてくれずに、ずっと頬を膨らましていたな。それから後を追うように入学してきた。もともとは人見知りの激しい、入学当初は僕と枢しか話す相手が居なかったから、僕も随分やきもきしたっけ。
「でも、まぁ英と気が合うのは分かる気がする…」
「うんうん、も藍堂もレベルが一緒っていうか…、性格が似てるもんね」
二人で感慨深いため息をついていると、渦中の二人はケーキの取り合いをしている。
「拓麻ーっ!英がイチゴ取ったー!」
「な!?お前がくれるって言ったんじゃないか!」
「言ってないもん!」
「言った!」
些細な、もとい、どうでもいい言い争いをしている二人を見て、僕と架院はまた溜息をついた。