「うん 似合ってる」
淡々と述べられる言葉は何処までが真実で何処からが虚実なのか、私は未だに理解できないでいる。
着せられた服を見下ろすと私が私じゃないみたいに着飾られていて、彼を見上げると変わらない表情のまま。私も彼のようにポーカーフェイスのつもりなのだけど、彼から見れば全然らしい。
いつか、気紛れに彼が差し出したのはかの有名な殺人鬼が作ったナイフ。見るからに毒々しいそれは以来私の仕事道具へと変わった。

少しずつ 少しずつ 何かを与えられ 何かを失ってく。

陽が沈み闇が広がると、私のと彼は仕事へ向かう。
華々しい街へ繰り出すのではなく寧ろ間逆である。如何にも胡散臭い建物へ侵入し、向かう先は最上階。あちらこちらからドンパチが聞こえる。
 この前教えただろ? あれ、試そうか」
頷くと、彼は肯定の意を示し頷く。
相手はただの素人で、わざわざゾルディックに頼むような内容ではない。けれど、この以来を受けたのは私を試すためであると暗に知っていたためこうしてわざわざあの山を降りた。
ナイフには毒が仕込まれている。
それは誰が見ても一目瞭然だが、素人目には趣味の悪いナイフとしか映らない。後ろから近づいて死なない程度に首を斬る。その瞬間首から勢いよく血が噴出してその向こうにイルミが見えた。頚動脈を敢えて外したのは、依頼主からそう言われていたから。瞬殺するのではなくじわりじわりと恐怖を与えながら殺して欲しい、と。悪趣味だと思う。けど、実行しているのは紛れもない自分なのだから少し自分に幻滅する。
ターゲットは少しずつ肢体が動かなくなっているのに気づいているのだろうか。もしかしたら気づいていないのかも知れない。ナイフに仕込まれた毒は序所に傷口から血液を介し体内を侵食し、第一に肢体を動かなくする。本来は拷問用の毒なのだ。第二段階に入ると、毒に犯された血管が損傷し身体の至る所から出血する。この時、痛みはほとんどなく 代わりに出血していくのが感覚で分かる。毒はその後も体内を侵食し続けやがて身体が溶ける。声にならない声を上げている死に損ないを、見下ろす。辺りに残ったのは、溢れるほどの     ち        の        う        み     。

「終わり?」
「うん よく出来ました」
イルミに褒められるのはうれしい。髪を撫でられて猫のように目を細める。冷たい指先が項を掠める。
どうしてなのか、分からない。いつの間にか魅せられて一緒に居る。その前は何をしていたのか、何処で生きてたのか、何も分からない。それでもいいの。イルミと一緒に居られるのなら。
「なに考えてるの?」
「イルミのこと考えてる」
は俺のことだけ考えてればいいよ」
安心する。彼と居れば満たされる。それだけでいい、他には何もいらない。


喩え、頭に彼の針が刺さっていても


(070429)
これタイトル「私の頭の中の針」にしようと思ったけど出来上がったのがシリアスだったから辞めた…