再び、闇の中に堕ちた。
「話がある」
そう言われ、やってきたのは父親の部屋。
入れ、と中から声がして重い扉を開けるとそこには父の姿。
「どうして呼んだか、分かるか?」
私は、分からないと首を横に振る。
「俺にはキキョウを止められないぞ」
そう言い、机の上の写真に目をやった。私もつられて目をやる。
「これは?」
何、と言おうとすると扉が勢いよく開いた
「まぁまぁ!シルバったらもうちゃんに話したの!?」
「あぁ、早いほうがいいだろう」
「私がちゃんに言いたかったのに!」
勢いよく入ってきたのは母で、父は少々押され気味だ。
「お母さん…?」
興奮している母に遠慮がちに声を掛けると母は視線を私に変えて言い切った
「ちゃんにお見合いの話があるのよ」
そう、笑顔で私に告げた。
何れ来ると分かってはいたけれど、体が硬直してしまったのはしょうがないと思う。
分かっている、変わっているさ、どんなに調べようとしても調べられない。
即ち、それは闇の人間を指していることぐらい。
ずっと前から分かっていた。けど、受け入れることが、肯定したくなかった。
今が幸せで、この幸せが崩れるなんて思ったこともなかったから。
いや、常に恐怖だった。
君が俺から離れることが。
けど、実際にそうなって俺が思うことは一つだけ。
だって、俺は盗賊だから。欲しいものは奪い取る。
それって急じゃない?
そう言おうとしたら、私の口が開く前に母は言った
「ママもね、一杯探したのよ。ちゃんに釣り合うような人を」
もう父親は失笑だ。
「やっと見つけたの!きっと二人はお似合いだと思うわ」
母は大概が包帯で包まれているからよく見えないけど、笑顔なのは分かる
「…誰なの?」
私にしたら一生の問題だ。
そして母親はにこにこしながら私に告げた。
彼女が外に居るときじゃないと流石に無理だ。
単身でゾルディックに乗り込むなんて自殺行為もいいところ。
俺は彼女に依頼した。
殺して欲しい奴がいる、と。
もちろん、俺の名前は伏せて。そしてターゲットは、俺。
「え、それって…」
「俺のことだよ」
何時部屋に入ったのか、彼は後ろにいた。
仕事帰りなのか、血の臭いがした。
「イル…?」
「だって、イルミとちゃんは血は繋がってないでしょう?」
母親は興奮冷めやらない様子だ
「ママ、イルミより強い人見つけられなかったの!」
呆然とする私を父親は「お前次第だ」といい、母親は「二人の子供が抱きたいわ」といい
連れだって部屋を出ていった。
残されたのは、私と彼。
「びっくりした」
「あはは、そう?」
「そうだよ、しかも急じゃない」
「早くしないとどっかに行く気がして」
「私が?どこにいくのよ…」
思い当たる節は、あった。
「俺のものになってよ、」
『了解した』か、パソコンに映っている文字を呼んで思わず笑ってしまった。
彼女がくる。俺を殺しに。
そう思うと楽しくてどうしようもなかった。
君はどんな顔で人を殺すの?
髪を高い位置で一つに纏めて、腰には愛用のナイフ。
「行って来るね」
そう残して部屋を出た。
もうすぐで夜が明ける。その前に目的地に着かなくちゃ。
必然的に速く歩く。
たどり着いたのは廃墟。
こんな所にターゲットはいるのだろうか?
もうそろそろ、来る頃だ。
時計を見て、俺はソファから立ち上がった。
顔の筋肉が緩みっぱなしだ。
背後に気配を感じた。
絶をしているけど、相手が念能力者なんて君は知らない。
だから、その絶は甘い。
君を引きつけるように俺はそのまま立っている。
ねぇ、早く俺を殺しに来てよ
「…え?」
彼女がナイフを掲げた瞬間、その白く細い手首を掴んだ。
俺の顔を覗き込むような形に持っていく。
彼女の第一声はそれだった。まさか、あなただなんて、驚愕の声。もっと聞かせてよ
「どうして?」
「欲しいものは奪い取る。それが盗賊だろう?」
彼女は目を見開いた。
そして、ゆっくり微笑んだ。
「私を攫って」
もう、あなたしか見えないんだ。
だから、私の前から邪魔なものは全て消して、そしてあなただけの私に。