赤と黒しかない、私の記憶。
何もかもに嫌気がさした、あの頃。手は既に赤く染まり、闇の底を這い蹲って生きていた。
別に他人の命なんて興味は無くて、生きていようが死んでいようが自分には関係がない。
思えば、あの家に生まれたことが私の不幸の始まりだった。
毎日が死ぬ瀬戸際で、あれはまるで地獄だ。ギリギリを生きてきた。
殺しのいろはを教わったのは物心つく頃。
人を殺すことは日常だった。死体は見慣れた光景だった。
いつからか、こんな毎日を疑問に思った。
その日は仕事だった。パキドアから少し離れた街での暗殺依頼。
依頼内容は"派手に"依頼するやつも依頼されてるやつも狂ってる。
ターゲットの男は少し小太りで、如何にも人が良さそうで
―――そう、自分とは正反対の
後ろからそっと近づいた
―――躊躇いなんてしなかった
そっと構えたベンズナイフは誕生日に父から貰ったもの
月明かりも、何もない
暗闇の中で
まず、背後から斬り付けた 急所を外して 血が多く出るように動脈を狙って
ナイフに仕込んであった毒が聞いてきたのか、じわりじわり、と動かなくなる
倒れ込んだ男の傷口は壊死し、血は変色し、原型は、もう留めていなかった。
顔ももう分からない。手も、足も、何もない。
「何してるの?」
声を掛けられた、この異常な光景に
「ねぇ、何してるの?」
「何も」
その人は、私の目の前に倒れている男を面白そうに眺め、そして私を眺めた
「…君、名前は?」
「ヘルゼリッシュ。」
なんて綺麗な言葉だろう、ヘルゼリッシュ。私の念能力。千里眼。
「これからどうするの?」
「あなたに関係あるの?」
質問を質問で返すと、彼は首を傾げて
「君に興味があるから」
そうやって、笑った顔は年下の弟が悪戯をした時に似ていた。
少し胸が苦しくなった。彼はきっと今も泣いているのだろう。帰らない私と、裏ぎった私と、あの地獄の日々に
―――キルア… ごめん
ぎゅっ、と握った掌に鋭い爪が食い込んで血が落ちた。赤い血が地面に落ちてだんだん広がっていく。
立ち上がって下を向いている私を覗き込むように目の前の彼はしゃがんだ。
「俺はシャルナーク、何かあったら電話して」
そう言って差し出したのは携帯の番号と思われる数字の羅列。
「じゃあ、またね。ヘルゼリッシュ。」
また笑って彼は消えていった。夜の闇の中に。
、お前の天職は殺し屋だ
今日は何して遊ぶ?
お母さんはちゃんがいい子に育って嬉しいわ
姉様、一緒に寝てもいい…?
俺はのこと好きだよ
頭をぐるぐる回るのは家族の言葉と、私を苦しめた言葉と、大好きな言葉
弱い私を許して、未来に恐れをなして逃げてしまった私を