腕の蝶のタトゥーにそっと触れて
思うのは、あなたのことしか無いじゃない。
忘れたくても忘れられないんだ
記憶の奥底に仕舞っても、腕を見てしまう度に思いは朽ちずに留まる。
そうなるように、あなたが仕組んだんでしょう?
「仕組んだなんて、人聞き悪いな」
いつの間、居たのやら彼は私のお気に入りの椅子に座って
肘をつきニヤ、と笑ってそう言った
私が呆れたように彼を見る
「クロロは心の声でも聞こえるわけ?」
「の言いたいことは分かるんだ」
見透かされてるなんて、嫌だ、と言うと
お前は分かりやすい、と返された
「ココア、飲む?」
私夜勤明けなのよ、と言えば
「夜勤明け?…疲れてるのか?」
「そりゃぁ、疲れてますよ」
また、考え込むように俯くと
今度は至って真剣な顔で
「今夜はお預けか、」
と呟いた
彼には呆れることばかりだけど、今度ばかりは開いた口が塞がらない
「ん?して欲しいのか?」
「疲れてるからいいです」
あなたには私の他にも女が沢山いるでしょ?と問えば
「お前が一番だ」
沢山いることは認めるのね
「ねぇ、私本当に疲れてるの 寝て良い?」
というか、ここは私の部屋なのだけれど
彼が我が物顔でいるからつい、聞いてしまう
「が寝たら俺は暇じゃないか」
「何か欲しいものないか、調べてたら?」
パソコンを指しながら、答える
「私は寝るからね」
パタン、と寝室のドアを閉めて電気を消して
いつの間にか、意識は遠のき、眠りについた
そしてタトゥーを見て、やっぱり思った
貴方は蜘蛛で、私は蜘蛛に捕らわれた蝶なのよ