「witch hunting?」
 「うん、そう。団長そういうの好きでしょ?」
 シャルから手渡された資料には"witch hunting"について書かれてある。
 "witch hunting"とは魔女狩り。
 十字架に吊された女が火炙りにされている写真がでかでかと載っている。
 生憎と俺はこんなものには対して興味はない。過去の遺物だ。
 怪訝そうにその写真を見ている俺を楽しそうにシャルは見ている。
 「ここ、読んでみて」
 ペラペラと何枚か捲って長々と書かれている文章を指さしてシャルは言った。
 「…ほぅ」
 感嘆の声を思わず漏らしてしまった。
 「好きでしょ?そういうの」
 にやり、と笑った顔にはしてやったり、という感じだ。
 「これは欲しいな」
 「じゃあみんな集める?」
 「そうだな…、いや、いい 俺一人で行くさ」
 「了解」
 愛用の携帯を取り出してメールを打つシャルの隣で俺はもう一度その資料に目を通した。
 伝説の魔女、ローレライ 美しい歌で舟人を誘惑し破滅させるという魔女。
 その魔女のように美しい歌声で人々を魅了し彼女に近づいたものは二度と帰ってこない。
 街のはずれに彼女の家はあるが、帰ってきた者がいないために女の正体は不明。
 そして、とても美しいと言われている。

 恐らく念能力だと思われる。いや、そうとしか考えられない。ただ、興味が沸いた。 
 







 それから一週間ほどあとに俺はそこへ向かった。
 シャルの資料に書いてあった通り、賑やかな街だった。街は人で溢れかえっている。
 街の人に聞いたところ、あの女の家はこの街の少し行ったところにあるという。
 そして「あんた本当に行くのかい?やめた方がいい!もう今週で5人は帰ってこないんだよ!!」
 そう言って引き留められた。が、「そうですか」と言って俺はその女の家に足を向けた。

 街から遠ざかるに連れて人気はだんだんなくなり、そして聞こえてきた。
 魔女、と言われる女の声が。


 Ich weiss nicht was soll es bedeuten,Das ich so traurig bin.Ein Maerchen aus alten Zeiten,
 Das kommt mir nicht aus dem Sinn.Die Luft ist kuehl und es dunkeltUnd ruhig fliesst der Rhein,
 Der Gippel des Berges funkelt,Im Abendsonnenschein…

 その声は流石、伝説の魔女ローレライと例えられるだけあって美しかった。
 だが、そんなに悠長にもやってられない。例えばこの声を聞くことで操作されるような能力だとやっかいだ。

 その家は至って普通だ。というか、予想していたよりも小綺麗だった。
 家に近づくに連れ唄声は次第に大きくなっていった。




 
 「綺麗な声だな」
 女の背後にあるソファに座り、そう声をかけた。
よほど驚いたのか唄とともに行動まで止まって微動だにしない。
 そしてゆっくり振り返った。女は確かに美しかった。
 長い髪は一つに結われており、吸い込まれるようなアメジストの瞳は見開かれている。
 「…誰?」
 「クロロだ」
 「クロロ…?何者?」
 「盗賊、だな」
 「盗賊が何の用?」
 怪訝そうに寄せられた眉間には皺が寄っており俺のことを警戒しているのが手に取るように分かった。
 そんな状態を面白く感じながら女と会話をしてる。
 「お前を攫いに来た」
 そう言った瞬間に女は素早く動き側にある小瓶を手にした。
 そしてそれを俺に投げたかと思うと、その小瓶は目の前で破裂し、辺りは煙で包まれている。
 煙が消えた頃、女は逃げたかと思ったがまだ目の前にいて不適に微笑んでいる。
 「ねぇ、本当に何しに来たの?」
 楽しそうな声で訪ねられた
 その手には無造作に握られた人形がある。

 「まだ私を捕まえるとでも言うの?」
 「このくらいが丁度いいハンデだろ?」
 煙は俺の四体を捕まえたかのように離さない。ようするに動かせない。
 「噂を確かめに来たんだよ」
 「噂?」
 「お前の唄声を聞いたやつは帰ってこないってな」
 「あぁ、だから最近人がよく来るのね」
 「何してたんだ?」
 「なーんにも、」
 「それは?」
 女の後ろにある棚に無造作に置いてある人形。
 「なんだと思う?」
 「…念だな」
 「あたり。でも、みんな可愛くないの きっとあなたなら綺麗な人形が出来るわ」
 そう言って手に持った人形にキスを落とした。そうして、笑った顔は妖美だった。
 「だろうな」
 「すごい自信」
 「事実だろ」
 「そうだなぁ、あなたの念能力は?」
 「それが念の制約か?」
 「質問してるのは私よ」
 俺を拘束している煙が締め付ける
 「ねぇ、念能力の名前」
 「教えると思うか」
 「思わないわ」
 会話が噛み合っていないのはこの女の所為だ。
 「さっき…」
 「何?」
 「さっき唄っていたのは、ローレライだろ?」
 「あら、博識ね」
 「美しい歌で舟人を誘惑し破滅させるという伝説の魔女、か」
 「魔女、ねぇ、」
 先程の人形を弄びながら彼女は嬉しそうに呟いた。
 「名前、聞いてない」
 「名前?」
 「あんたの名前」
 「知りたいの?」
 「俺は名乗っただろう?」
 「あなたの念能力の名前、教えてくれたら教えてあげる」
 「卑怯だな」
 「あなたにそんなこと言われたくないし、それに、交換条件よ」
 「交換条件ね…」
 互いが了承しなければ成立しない
 「そんなことより、あなた気付いてた?」
 「知ってるさ」
 「随分自分に自信があるのね」
 「2,30人か、」
 「そんなところでしょうね」
 あからさまに弱い奴らが近づいてきている
 雑魚もいいところだ
 「じゃ、私行くから」
 「これ解いて行けよ」
 「天下の幻影旅団の団長の実力でも拝見しましょうか。」




 俺は"盗賊"だとは言ったが"幻影旅団"だとは言っていない
 知ってたのか、この女  しかも、俺が団長だと
 「いい度胸だ」


 俺の体を拘束していた煙を振り払って雑魚を始末していく











 「流石、ねぇ」

 嬉しそうに笑う








 散らばった死体に目もくれずただ真っ直ぐに俺を見て
 「ねぇ、団長さん 私、幻影旅団に入団したいんだけど」

 この女、謀ったな。
 そう気付いたときには時既に遅し。
 俺はどこまでこの女に振り回されるのか。
 まだ始まったばかりだ。