01. 02. 03. 04. 05. 06.







01.
「輪廻転生」
突然、ポツリと何の前触れもなく呟かれた言葉。
私は弄っていた義骸から目を離して、思わず振り向く。
「信じていますか?輪廻転生」
彼は煙草を吹かして曖昧に笑いながら、繰り返す。
私は視線を再び義骸に移した。
「信じていませんよ、そんなこと」
「どうして?」
視線がザクザク背中に刺さっている気がして集中できない。
「たとえ、輪廻したとして、転生したとは限らない」
「キミは嫌に現実的だ」
集中を失って、思わず振り返り視線を交える。
「生まれ変わったとしても、それは私じゃない」
違いますか、と視線を投げる。
「そうだね、確かにそれはキミじゃない。けど、」
吹かされた煙に眉を顰める
「それでも遺された人はキミだと思いたいだろうね」
「主我主義者ですね」
「人なんて所詮そんなものだよ」
嘲笑にも似た笑いにどこか蟠りを覚えたけど、
不意に来客が訪れたため聞くに聞けなかった。


それがあの人と最後に交わした、言葉。


02.




02.
浦原隊長の追放処分を受けて、涅マユリが後任の座に着いた。
それに伴い私は副隊長と副局長の座を辞任した。
あの人以外の部下になるつもりは、毛頭なかった。
連れて行って下さらなかったのなら、私は必要ないのでしょう。
縋りつくなんて真似は出来なかった。
惨めだった。
泣きたいのに、泣けない。
周りからは好奇の視線。耐え難かった。
「それで、どうするのだ」
「どうしよう、かな」
淹れ立てのお茶からは湯気が立ち上る。
私の曖昧な返答に目の前の彼は溜息を吐いた。
「死神まで辞めてしまうとは、莫迦だろう」
数少ない同期の彼は私に容赦の無い言葉を掛ける。
「これから、どうするのだ」
呆れた口調に視線を合わすと避けられた。
「いいの、流魂街にでも行くわ」
「何故?」
「ゆっくり生きたいの」
何もかも忘れて、ゆっくりと。

03.





03.
オレンジ頭が視界に入って、気持ち良さそうだなと不意に思った。
徐に手を伸ばして掴んだ。
そしたら何処からともなく、声が聞こえて、
「痛い」
だなんて、ヒヨコはそんなこと言わないのに
ふわふわ夢心地。すると、両手で頬を抓られて一気に覚醒。
「あにするのー!」
両頬を抓られているから間抜けな声が漏れた。
「不細工だな」
と感想まで述べられたので空いてる足で蹴りを入れてやった。
うごぉっ、と蹲る一護を一瞥してガッツポーズ。
「テメェ…ッ!」
涙目で凄まれても恐くない。
ふふん、と勝ち誇ったように鼻で笑ってやった。
「あ、私次の時間体育だ!じゃ、またあとで!」
そそくさとその場を去ると後ろから
!テメェ覚えとけよ!」なんて遠吠えが聞こえる。
教室に行くともう既に移動した後らしく、誰も居なかった。
窓側の一番後ろが私の席。横に掛けてある鞄を取って更衣室に向かう。
渡り廊下から、なんとなく視線を移したグラウンド。
オレンジ頭の、黒い服を着た、アレは、一護?

04.





04.
悶々とした気持ちを落ち着かせようとベッドに横になる。
けれど、なに、この気持ち。
込み上げてくる、何かを感じる。温かいような冷たいような、
ご飯を食べても、お風呂に入っても、テレビを見ても、
大好きなグループの新曲を聴いても拭えなくて。
結局、一睡も出来ずに朝を迎えた。
寝ていなかったせいか、普段はがっつり朝ごはんを食べるけど、
食べれなくて、のろのろと制服を着た。
鏡を見ると、一瞬違う人に見えて思わず目を擦る。
再び見上げると、私だ。
行ってきます、と告げるとお母さんは台所から陽気な返事を返す。
ゆっくりとした歩調で学校を目指す。
もやもやが晴れなくて、気持ち悪い。
思わず道端にしゃがみ込んで口を押さえる。
「…大丈夫ですか、お嬢サン」
見るからに胡散臭い人だったけど、見上げた瞬間に意識を失った。

05.







05.
見上げた天井は少し汚れていて、それは目の霞じゃなかった。
少し固い布団を押し上げて、
体を起すとそこはやっぱり私の知らない場所で、
思わず服を着ているか確認した自分を軽く笑った。
控えめなノックの音が聞こえて、戸惑ったけど返事を返した。
すると、奥から出てきたの体格のいいお兄さん、じゃなくておじさん…?
「えーっと、あの助けて頂いてありがとうございます…」
「お加減はもうよろしいのですか?」
「はい」
「それはよかった」
居た堪れない空気が流れる。
「その制服、黒崎殿と同じ学校ですな」
「一護のこと知ってるんですか?」
するとおじさんは曖昧に笑った。もしかしたら、知っているのかもしれない。
だって、ここはすごく胡散臭いし、あの一護の格好も胡散臭いから。
「一護って凄いですよねー」
「…なにがですか」
「あんなにあんなに大きな刀持って、」
「、覚えておいでなのですか?あなたは」
ピリッとした空気に変わる
「覚えている…?、何をですか」
「いや、なんでもありません」
すると、穏やかな空気が流れた

06.





06.
結局、鎌を掛けるつもりが逆に問い立たされる立場に変わったので
「お邪魔しました」と立ち上がった。
思わずよろめいたけど、なんとか自分で支えて鞄を手に取った。
「お帰りですか、またどうぞ」
なんて社交辞令に「えぇ」と余所行きの笑顔で応えた。
そういえば、私を助けてくれたあの人とは会わなかったけど、
倒れる前の曖昧な記憶なのでいつの間にか忘れていた。
靴を履いて、外に出て振り返ると寂れた看板が目に入った。

何処か擽るその看板、あれ、どうして、涙が出るんだろう
ポロポロとあふれ出る涙を手で拭う。けれど、止まらない

「喜助さん、!」

思わず漏れた言葉に、どうしてかわからないその言葉に、
忘れていた姿が蘇る

ふわ、と包まれた瞬間に

「僕は信じていますよ、輪廻転生」

彼の声で無に還ったのは、私の心