あの頃のように、素直に泣けて、声をあげてしゃくり泣ければどんなに楽だろう。
それを許さないのはわたしの無駄に高いプライドと、それからちっぽけなのか大きいのかあなたの存在。
背中に感じるのは、戸惑いと好奇、あるいはため息の混じり合った視線。
泣きながら座り込んだ。
座り込んだと言うよりは泣き崩れたという表現の方が当て嵌まっているかもしれないけれど。
どうしてわたしがすることは全て裏目にでるんだろう。
大切なものは側を離れていく、守りたいものは護れない。
愛してるなんて嘘だ。
みんな、わたしをそうやって騙すんだ。
それでもわたしは誰かに愛されたいから必死でそれをつなぎ止めようとして、
必死な心とは裏腹に大切なものはするりと腕を抜けていく。
どうしよもない、ただのばかだ。
「何をそんなに悲しんでいるんだ、君は」
優しい声なのにどこか棘を含んでいるように聞こえる。
わたしが素直にその言葉を受け取れる、そんな風に思っていないでしょう?
「ここの世界は素晴らしいと思わないのかな」
どんよりと曇った空には太陽も、綺麗な青も見つからない。
それをどうして、素晴らしいと評せるのだろうか。
「君にも何れ解るだろう、」
「…わたしには、わからない」
「自分の力を持て余すような愚か者と共にいた時間さえ、君は惜しむよ きっと」
何を根拠にそんなことを言えるのだろうか、この人は。
「わたしはあの世界が大好きだった…!」
遠ざかる背中にそう問いかけても振り返ることなく立ち去って部屋に響いたのは、ドアが閉まる無機質な音だけ。
戻りたいと、帰りたいと、願っても届くことはない。
あなたはわたしが居なくなって、わたしといた時間を誰と過ごしているの?
きっと容易に連れていかれた弱いわたしを、君は責めてそして自分さえも責めているよね。
ふたりで過ごした時間はもう戻らない。
あの日、みずたまりに映ったあの空は綺麗な七色の虹が架かっていたね。
虹の向こうで、逢えたら、そのときはわたしを強く抱きしめて。
―――――
藍染さんに拉致られたヒロイン(だと思ってください。