「わたし、もう無理だよ…」

 「なぜだ?」

 「あなたも分かってるでしょう?」

 わたし達は結ばれない運命なのよ、






    








 上流貴族の長女として生まれた。

 朽木家には及ばないが、名の知れた名家。

 そこの長女として生まれ、何不自由なく暮らしていた。

 本来ならば、朽木家と縁談があっても構わない、むしろそれこそが普通だった。

 けれど、わたし達は違う。

 わたしは、違う。







 「…そんなことは関係ない」

 「関係あるわ、わたしがあなたの元へ嫁いでもあなたは別の女を娶らないといけない」

 「その必要はない」

 「あなたも分かっているでしょう?わたしは子供を産めない体なのよ」

 「それが何の関係があるのだ、子供などが居ればそれで…」

 「子供を産めない女を周りが承諾しないわ」

 「周りなど、関係ない」

 「あなたは自分の立場を理解していない、あなたは朽木家の当主なのよ」
 
 「大事なのは当人同士の気持ちだ」

 「もう、疲れたの…」

 あなたを傷つける結果に終わってもいい

 「あなたをもう、愛していないの」

 わたしという存在を忘れた方があなたのためになる

 ならばわたしは身を引こう

 それであなたが幸せになるならば

 「、…」

 「当人同士の気持ちが大事なのでしょう?なら、もう無理だわ」

 「誰に何を吹き込まれたのだ」

 肩を勢いよく掴まれる

 痛い

 「何も… わたしは自分の意志を伝えただけ」

 力がさらに加わる

 「、それがお前の意志なのか」

 「そうよ」

 「…ならば、致し方ない」

 ゆるり、と力が緩められ腕は解放された

 「次に会うときは、朽木家の当主と、桐生家の長女として」

 お会いしましょう。

 「あぁ」

 
 ひらりと踵を返して行く。

 あなたの大きな背中が愛しい。

 






 



 「これで、良いのでしょう?」
 「はい。様には何と御礼申し上げればよいか…」

 襖の向こうから朽木家の者が答える。

 すべてはあなたのため。

 朽木家の繁栄のため。


 




 これも一つの愛の形。