|
安っぽいオレンジ色のクレヨンで描いたような三日月は西の空にポツンと浮かんでいて、その周りに輝く星を見て少し寂しくなった。きっとあの月は近藤さんで一番近くで明るく輝いている星はトシだ。そしたらあれが沖田くんで、少し遠めに見えるあの星は山崎さんなんだろう。 定位置が欲しいわけじゃない。あなたの一番になりたいわけじゃない。だけど私は我侭だから、あなたの目に映っていたい。 私が住む町は江戸からそんなに離れているわけじゃないけど、あの雑踏とは無縁な穏やかなところだ。夜になれば街頭がポツリポツリと道を照らし、空を見上げればシーツに穴を開けて透かしたように綺麗な星空が見える。そんなところ。 私は一人っ子でおまけに女だから両親に無理を言って江戸に行く、なんてそんなこと言えなかった。泣きそうな母と辛そうな父の顔を見るのが耐えられなくて、私はここに残った。 だけど、みんなに会えなくて一人で泣いてるなんて知られるのは私のプライドが許さなかった。 (やっぱり最初にトシに会いたいな。そして私を放っておいた罰としていーっぱい貢がせてやる!だって幕臣だもん、お金持ちだよね!近藤さんも元気かな、あの人に限って元気じゃないなんて有り得ないな。総悟も可愛く育ったのかしら?せっかく可愛い顔なのに、もったいないなぁ… それに山崎さんも、きっとトシにパシられてるんだろうけど。みんな、みんな元気かなぁ) 流れる視界をぼんやり眺めて、次第に顔は緩んでいく。 今の今まで、自分からは絶対に会いに行かない、って思っていたけど誕生日プレゼントと一緒に届いた江戸行きのチケット。荷物を纏めて家を飛び出した。やっぱり私はトシがいないと駄目みたい。 急に、電車がふわりと浮かんだ気がした。はっとして周りを見ると、そこはもう違う世界。 私の世界が、世界が暗転した。 暗闇に落ちていく、その瞬間 浮かぶのはやっぱりトシの顔で、 (ごめんね、トシ 大好きだよ) そして私の記憶は途絶えた。 重くなる 瞼 、 君 が見えない |