「こっち!」

総悟の手を引っ張って、走る。浴衣のせいで小幅は狭い。人込みを掻き分け、祭りの音が耳を掠める。だんだん遠くに聞こえてくる祭囃子。心拍数が上がる。だって、走っているから、総悟と手を繋いでいるから。

「どこ行くんですかィ」
「いいところッ!」
「そりゃ楽しみでさァ」

総悟が後ろで笑った気がした
人が少なくなっていく、祭りの端っこ。

階段を駆け上がって鳥居をくぐる。灯籠の火と雲に隠れている月と星だけが二人を照らす。

「綺麗でしょ…?」

勢いよく走ったから、息が荒れる。肩で酸素を吸う。でも総悟は鍛え方が違うのか、体力の差か、息一つ乱れていない。
ぼんやり聞こえる祭りの音。優しく光っている灯り

にしては上出来でさァ」

そう言ってあの独特の笑みを向ける。

「ここからならお祭りも見えるし、ちゃんと花火も見えるんだよ」
「マジでか!」

少し小さく見える祭り会場には銀八先生が綿菓子を両手に持っていたり、近藤くんがお妙ちゃんに付きまとっていたりとか、夏休みであんまり会えないクラスメートが大集合している

「この前見つけたんだ」

得意げに笑うと頭をグシャグシャと撫でられた。まるで犬にするように、抗議の目を向けると「ご褒美ですぜ?」と笑った
石段に腰を下ろして、最初に買ったりんご飴を齧る。隣で総悟はカキ氷を食べてる

「ね、総悟」
「んあ?」
「ベーってして」

着色料で真っ赤に染まった総悟の舌を見ようと思って、

「お前がしろや」
「ちょッ!何してんのッ!?」

黒く笑ったと思えば、スッと腕が伸びてきて私の両頬に添えた。思わず声が上ずって、一気に上昇する
総悟の顔が視界いっぱいに広がって、そして

がりんご飴みてェでさァ」

そしてまた、笑った



夜 が 優 し い 日


(あなたが笑うから、)