「近藤さんに言えなくても俺には言えんだろ?」
縁側の隣に座れるように促されて、すとんと腰をおろした。トシさんは煙草に火をつけて、煙が包んだ。お兄ちゃんとは違う安心感が、トシさんには昔からある。
「…言わなきゃだめ?」
「無理強いはしねェけどな」
トシさんの自室だから、人に聞かれることもない。けど、何か後ろめたいと感じる。
「だってトシさん怒るもん」
「言えねェことしてんのかよ」
不機嫌な声色に思わず、素直に言ってしまいそうになる。
「だってね、きっと反対すると思うし、それに…」
「毎朝毎朝、と総悟が一緒に出て行くなんざ、何かあると思うだろ?…それに、」
一息ついて、トシさんは私の腕を掴んで着物の袖を捲る
「この痣はなんだ?」
罰が悪そうな顔をしたのを、トシさんが見逃すわけなかった




「阿呆だろ」
真顔で言われてちょっとヘコんでしまった。
「だって、このまえ街で知り合った女の人が道場やっててね、ほら、廃刀令で道場に通う人なんていないんだって。だから、好きなだけ使っていいって言われて、ね」
トシさんは胡坐をかいていて私は正面で正座をしている。まるで説教をされているみたいに
「総悟に教えてもらってるってか」
「その通りです…」
流れる沈黙が痛い… 俯いていた顔を上げると不機嫌そうな(いつもだけど)顔があった。バッチリ目があって叱られた子供の如く視線を慌てて外す。
「なんで朝なんだよ」
「それぐらいじゃないと時間無いんだもん」
確かに、と呟いてトシさんは煙草に手を伸ばす。そのまま口に咥えてライターで火をつけた。
「で?」
質問の意味が分からず首を傾げる。
「どのくらいまで上達した?」
「…んっと、結構動けるようになったし、総ちゃんと比べるとまだまだだけど…」
「まぁ、の剣の腕は昔から知ってるからな、それに感覚も戻ってきた頃だろ」
トシさんは深く煙草を吸ってそして吐き出した。私はなにを言われるのかドキドキしながら次の言葉が出るのを待っていた
「俺はお前がしたいことに反対はしない。ただ、近藤さんが反対するなら俺は賛成はできない」
「うん、分かってるよ」
苦笑しながら頷いた
「やれるだけ、やってみればいいさ」



きららかにうららかに