重たいドアを開ければ熱気が一気に押し寄せてきた。むぅっとする空気に顔を思わず顰めてしまったのはしょうがないと言ってほしい。だって暑いんだもん。だけど探していた後姿を見つけて一気に顔の筋肉が緩んでしまうのも、しょうがないよね。

「お疲れー」

「ぅおおッ!!テメェ何してんだ!」

面防具と竹刀を取って休憩しているトシを見つけた。空は青い。雲は絵の具で描いたように白い。それとなぜかマッチしていて、うっすらと笑ってしまった。こっそり後ろから忍び寄って彼の頬に冷たいペットボトルを当てた。面白いくらい予想通りのリアクションをしてくれるトシを見てまた頬が緩んだ。隣に腰を下ろして、先ほど悪戯に使ったペットボトルを差し出す。

「差し入れ」

「おォ、サンキュな」

一気に減るアクエリを見て暑かったんだな、と思う反面 気持ちが通じているようでうれしかった。
(ポカリかアクエリか悩んだ甲斐があった!)

「いつもにも増してハードじゃない?」

「…公式戦控えてるんだよ」

楽しそうに爛々と輝く強い瞳の眼差しを見て、跳ね上がる心臓を慌てて隠した。そして、なんでもないという風に冷静を装いながら聞いた。

「いつ、だっけ?」

「来週」

そっけない答えに苦笑して、訪れた沈黙がなんだか無性に憎い。普段は感じないもどかしさを感じて視線を外す。

「別に応援とか来なくていいから」

予想外の答えにぽかーんとして、脳みそが回復するまで約5秒。堰を切ったように感情が溢れ出す。

「なんで!?」

「いや、なんつーか… が来るといろいろ、なァ…?」

歯切れの悪い答えに納得するわけなんてない。思わず立ち上がりそしてトシの首を絞めた。

「酷い!!!疚しいことでもあるの!?」

そして、首を絞めたままがくがくと激しく上下に揺らす。

「ッテメ!なにす…!」

抗議を受けて絞めていた力を緩めるとうっすら涙が浮かんでいる。

「ッ!舌噛んだじゃねーか!」

「じゃあ理由言ってよ」

「…、さて練習すっかァ」

すくっと経ち上がり本気で戻ろうとするトシの袴を掴んだ。

「お前は俺が優勝して帰ってくるのを待っていればいいんだよ!言わせんな、んなこと…」

トシの顔が赤くて、彼の意味を理解した私もつられるように顔が赤くなった。


帰るよ、君の元へ

が待っているから、俺は)





"恋煩い"企画投稿作品