久しぶりにブランコに乗った。小さく揺らしてだんだん揺れを大きくする。忘れかけてた感覚が一気に戻って、楽しくて楽しくて町を見下ろすようにブランコに乗り続けた。そのうち太陽は傾いて空が青から赤く染まる。それでも私は乗り続けた。一番星が空に見えて、思わず「あ、一番星」と呟いたけど独り言は誰にも聞かれることなくそのまま消えた。それが、少し寂しくて揺れを小さくして、地面を見つめた。茶色い砂がサラサラしている。公園の入り口が騒がしいと思ったらパトカーが急ブレーキをしてそこで止まった。荒々しく出てきたのは真撰組で、一直線に私のところに早足で来た。
「探しましたよ」
疲れているような、悲しそうな、切なそうな、複雑な表情をした退さんがそこにいた。手を差し出して、私はその手を見つめるだけだった。
「戻りましょう」
優しい声に導かれるように、小さな子供が手を取るように私はこくん、と頷いて退さんの手を取った。

「ただいま」
真撰組屯所 の看板が立てられている門を潜るとそこには局長である近藤勲が仁王立ちで立っていた。少し、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに、立っていた。
、暗くなる前に戻れと言っただろう」
不機嫌そうな声だと思っていたら、心配を音に出したような声だった。何も言えず、黙って俯いていると総ちゃんが間に入って「飯にしましょうや」と言った。悲しそうな目は私から離れて、寂しそうな背中が目に入った。
みんなで机を囲んで食べる食事は好きだけど、どうしても今日はそんな気分じゃなかった。何がそんなに哀愁をそそるのか分からない。だけど、私はすごく悲しかった。無力だと痛いほど知っているけど、遠くで聞こえる隊士たちの声を聞いて、聞きたくないと布団にもぐりこんだ。一人取り残される感覚が恐ろしくて、布団の隙間から見える月を眺めて、涙が浮かぶ。
遠慮がちなノックの後に開かれた襖。私は涙を引っ込めて、平然と見た。
「…どうしたんだ」
そこにいたのは紛れもなく真撰組を総括している近藤勲で、私の知っている人じゃなかった。
小さい頃、泣きじゃくっていた私の頭を撫でてくれたお兄ちゃんじゃない。手を引いていろんな所に連れて行ってくれたお兄ちゃんじゃない。布団をぎゅうと握り締めて俯くだけの私の頭を大きな手が触れた。ぱっと前を見ると悲しそうな顔。
「妹が哀しんでるのに、何もしてやれないなんて無力だなァ…」
無理矢理笑って部屋を出て行こうとするお兄ちゃんの裾を握った。
「明日は一緒に、居てくれる?」





酷く鮮明、だけど脆くて曖昧な、


(兄妹という位置づけ)

(060812)