ぐるん、と視界が回って背中を撃った痛みに悶えていると、喉元に剣を突きつけられた
冷や汗が背中を伝うのが 分かった 思わず私は唾を飲み込んだ 冷たい剣先から血が滴る
「まァだ、俺には敵いそうにないでさァ」
楽しそうな声色が上から降ってくる 力の入らない拳を精一杯握った
私はニヤニヤしいている顔を下から睨み付けた
背中合わせの感情
「怪我の具合はどうですかィ?」
遠慮なんてせずに、襖を開けてズカズカと救護室に入ってきた
右腕の肘下にかけて、青く痣になっている
木刀だったから良かったものの、これが真剣だったら腕ごと切り落とされていただろう
「異常ありません」
負けた相手を直視できるほど私は切り替えが上手じゃない
自分でちゃかちゃか包帯を巻いて、隊服を着なおした
「あーあ、痕がついちまいましたねェ」
然して残念そうには聞こえない。むしろ楽しそうにすら聞こえる
「痕くらい、体中についてますよ…」
何を今更、と思う
女だから、という理由で弱者のように扱われたくないがために人一倍稽古に励んだ
お陰でそれなりにはなった
だけど、男と女の力の差は埋められない
歯がゆい思いをしたことも一度や二度じゃない
任務中に怪我をしたことも、稽古で怪我をしたことも数え切れないくらいにある
痣くらい、時間が経てば何れ消える 大それたことではない
「も、そろそろ戻ったらそうですかィ?」
「…何に、ですか?」
一瞬、沈黙が流れて隊長は無の表情だった
「普通の生活に」
恐れていたことを言われて、肩が揺れた
「何を…」
口が渇いて、うまく言葉を発せられない 困惑した表情をして見上げると、冷たい目線を向けられた
「ここはがいるような、綺麗な世界じゃないですぜ」
「…今更」
心臓が勢いよく音を立てる 嫌な汗が額からドッとあふれ出る
「俺ァ、これ以上をこの世界に置いとく気はありませんぜ」
しゃがみ込んで、無理矢理視線を私に合わせた
「そろそろ、幸せになってみやせんか?」
(愛だ恋だのやってないと、生きていけないのよ このご時世)