「あ、雪…」
手を空に翳して、掌に落ちた雪がじわっと広がり溶けた
「雪がそんなに珍しいんですかィ?」
隣にいる、真撰組の隊長を務める沖田総悟はなんでもない と言う風に空を見上げた
厚い雲が空を覆っていて、青空が見えない
「わたしが育ったところは、雪なんてあんまり降らないんです」
「へぇ」
呟きのような相槌のような、それ
「の育った場所、か」
目を細める、綺麗な指通りの良さそうな髪に雪がとまる
「いつか、言ってみたいですねェ」
「良い所ですよ、緑もいっぱいで 綺麗な」
春には花がいち早く咲いて、夏には向日葵の黄色が眩しい
秋になると鮮やかな紅葉が見事で、冬には空が透き通るほど美しい
穏やかな、そして懐かしい 思いを馳せるように雪を見る
少しずつ、白く染まっていく道
「寒くないですかィ」
息が白くて、
「そんなに暖かいところで育ったんなら、寒さに弱いんじゃないかと思って」
「ちょっと寒いかも」
へにゃと力なく笑うと、そうですかィと笑って上着を掛けてくれた
「あ、いいよ!沖田さんが風邪引いちゃうし…」
「俺はそんなに柔じゃないんで、大丈夫でさァ」
掛けられた上着から沖田さんの匂いが、優しく広がった
「手、冷てぇや」
不意に触れた手が、冷たいと言って沖田さんはわたしの手を取った
「わわ!だ、大丈夫ですよ!」
頬が高潮して、熱くなるのを感じた
そのまま沖田さんはわたしの手を握って、息を吹きかけた
命を吹き込むように
「さて、帰りましょうか」
そのまま歩き出した沖田さんの背中を追いかけた
白くて冷たい それ
(この思いだけは溶けないで ずっと ずぅっと)