答 え な ん て と っ く の 昔 に 出 て い た




 縁側に座って煙草を吹かしている副長を見つけた。左には愛刀、右には煙草の箱とライターが置いてある

 その背中に哀愁が漂っていて、そのまま消えてしまいそうだと思った。

 いつ死ぬかも分からない日常が、不安にさせたのかもしれない。

 煙草の煙のように消えてしまわないように、副長の背中に飛び込んだ。

 「お前…、手加減ってもんを考えろ!」

 咽たのか、涙目だ

 「やだなー、そんなんを避けれないで副長務めれるんですかー?」

 ニヤと笑うと、諦めたのか煙草とライターを退かしてくれた。

 そこに座れということなのか、と解釈して右隣に腰を下ろした。

 「一本ください」

 煙草を指差して言った

 「は?」

 理解できなかったのか、副長の頭の周りにクエスチョンマークが見える

 「だから、それ一本ください」

 「女が吸うもんじゃねェよ」

 「偏見です」

 渡してくれなさそうだから、勝手に拝借 ライターで火をつけると、副長の匂いがした

 「腹も黒いんだから肺まで黒くするなよ」

 「それ、総悟に言ってください わたしは正常です」

 「…お前、総悟に似てきたよな」

 しみじみと言う副長を睨み付けた

 「わたし、総悟より年上なんですけどー」

 「最初はまだ可愛げってもんが…」

 「副長」

 「あ?」

 「わたしもう子供じゃないんで、手加減しなくていいですよ」

 ニッコリ笑って宣戦布告

 「…いい度胸だ」

 煙草の火を消して、戦闘開始 







歯 を 食 い し ば れ 、 目 を 逸 ら す な 、 気 持 ち だ け は 誰 に も 負 け る な




 目が覚めたら、隣にいたはずの姿も 温もりすら残ってなくて 着崩れた着物と倦怠感だけが残された

 それだけがあなたがここにいた証し。袖を通しなおして、ベッドから這い上がる。

 体が酷くだるい。動くだけで、疲れて腰を抑えて窓辺に座った

 障子を開けて、窓辺に寄りかかり煙管に火をつけた

 地上を歩く人たちは 蟻みたいに小さい 黒い点が動いているようにしか見えない

 煙管の独特の匂いが、部屋全体に染み込んでいる

 それだけで、安心する 私は独りじゃないんだと 思い込みでもなんでもいい

 ただ、そう思えるだけで 私は生きていけるから

 「ばか」

 答えてくれる人なんて いないけど

 「誰が馬鹿だ 誰が」

 咥え煙草をしたあの人が柱に寄りかかるように立っていた

 「…なにやってんだ、テメェは」

 呆れるようにため息を吐いて、窓辺に座る私に近づいた

 「人が煙草買いに行っている間に勝手に感傷に浸りやがって」

 「だって…、トシが いないからっ…!」

 俯いたら涙が溢れてきた 子供みたいに泣きじゃくった

 「お前、分かってないみたいだから言うけどな」

 トシは頭を掻いて、真っ直ぐ私を見つめた

 そして、少しだけ視線を外して

 「お前以外に女なんていねェからよ だから余計な心配すんな」
 
 私の大好きなトシの大きな手が私の頭を乱暴に撫でて、そんなこと言うからまた涙が出てきた






失 う こ と を 恐 れ な い の が 強 さ な ら 弱 い ま ま で い い




 「…攘夷志士、だったのか」

 血が滴り落ちる刀を力なく、振り落として呟いた

 目の前の光景を受け入れることができなくて、俺は視線を外したまま彼女に問うた

 「だったら?」

 余裕すら見せる笑みを浮かべて彼女は笑った その笑みは綺麗だった

 足元には俺と同じ隊服を着た奴等が転がっている ただ違うのはみんな血を流して死んでいる

 「あなたと会うのは楽しかったけど、それも今日で終わり」

 俺が好きだった彼女の長い黒髪が風に揺れる

 「だって、敵だもの」

 「お前は知っていて俺に…」

 「当たり前 じゃなきゃ、あなたと会うわけないじゃない」

 血が似合わないと思っていたの頬には俺の仲間を斬ったときに付いたであろう血の跡が残っている

 そして、右手には刀 どれも赤く染まっている 

 「あなたは悔しくないの?」

 「何がだ…」

 「自国を天人なんかに乗っ取られて、何も感じないの?」

 心底不思議だ、という顔をしている

 「私は奴等を排除するためなら、なんだってする」

 決意をこめた瞳で俺を射抜く

 「…残念、もう時間だわ」

 いつの間にか彼女の背後に桂が立っていた

 大量の血を流したからか意識が朦朧とする 眩暈で立っていられない

 二人が窓から消える様子をぼんやりして 消えた

 「 さ よ う な ら 」

 口元だけがそう動いた

 そして俺は意識を、手放した