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「ひ、姫様!!!またそのような格好で…!」 悲鳴に近い声に思わず振り向くと顔が青くなったり白くなったりしている侍女がいた。騒がしいのは貴方の方よ、と軽くため息をついて気にも留めずそのまま足を進める。すると今度は金切り声のように甲高い声が耳に響く。それが嫌に耳障りで顔を顰めて振り向き、一瞥する。 「あなた、それでもわたくしの侍女なの?もう少し淑やかさを学んだ方がよろしいんじゃなくて?」 仁王立ちのまま下劣なものを見るように睨むと、侍女は涙目になり嗚咽交じりの声で弁解を始める。おめおめと泣いて膝をつく彼女に嫌気が差す。「泣けばいいってもんじゃないのよ」後ろでキンキン叫ぶ侍女に呟いてその場を後にする。 風を切るように走ると長い髪が流れる。冷たい空気が心地いい。目的地までさほど遠くないとはいえ、一気に走らせると名馬と言えども彼も辛いだろう。目的地までの途中にある湖で彼を休ませ、もうすぐ会えるだろう人々を思って顔が緩んだ。 「っ…!?」 目的の人物を見つけて、思わず駆け寄る。 「会いたかった…!」 上を向くと優しく困ったように微笑んでいる兄上がいて、私も思わず微笑んだ。 「やぁ、。久しぶりだね」 兄上の横にいたコンラートが覗き込むように、優しく笑う。相変らず爽やかだなぁ、なんて思っていると視界に入る、もう1つの影。 その人は、髪も瞳も黒くて、えっと双黒で…、 「あぁ、こちらがユーリ陛下だよ」 「…はじめまして、わたくしフォンクライスト卿ギュンターの妹でございます。」 わたしは一瞬きょとん、としたけど今までの教育の賜物か、微笑を零して挨拶した。 「え、えっと、はじめまして!渋谷有利原宿不利…、じゃなくて!渋谷有利です!」 一気に捲くし立てる彼を見て、思わず笑ってしまう。 「ていうかさ!ギュンターって妹いたの!?」 「え、えぇ、クライストにいるはずなのですが…」 その兄の一言に少し固まり、コンラートの方へ体を移動させた。 「…ところで?」 「はい?」 コホン、と咳払いをして兄上はわたしの肩をがっちり掴む。 「なぜ、あなたがここにいるのですか?」 「お手紙を差し上げたはずですが…?」 首を傾げて、はて?と考えるとコンラートがやんわりと間に入った。 「ギュンター立ち話もなんだし、それにユーリに立ったままだと疲れるだろう?」 「あ、あぁ、そうですね」 「その前には着替えてきた方がいいと思うよ」 下から上まで見渡すと確かに着替えた方がいいかもしれない。だってそれは明らかに、 「軍服じゃないか、まったくどこで手に入れたんだか…」 コンラートが呆れたように額に手をやる。その姿さえ様になっていて、噴出しそうになるのを必死に堪えた。 天気がいいから、と中庭にティーセットを広げてみんなでテーブルを囲む。いつの間にかヴォルフラムも円卓に加わってユーリ陛下の横を陣取っている。グウェンダルは仕事を休むことがよほど嫌なのかそれとも切羽詰っているのかお茶のお誘いに乗ってこなかった。ちょっとつまらない。ちなみに私は所謂淑女らしい、華麗なドレスに身を包んでいる。 「…二人は兄妹なんだよな」 「えぇ、そっくりでしょう?」 ユーリの問いにコンラートが答える。 「いやー、コンラートたちは似てないからさ、あ、ちょっとは似てるけど」 「ユーリ!僕とウェラー卿のどこが似ているというんだ!」 ユーリ陛下に凄むヴォルフラム。陛下が求婚したとかという類いの話は聞いていたが、惚れているのは明らかにヴォルフラムだろう。なんというか、浮気をした夫を叱る妻のようだ。いや、実際にそのような光景を見たことはないが、想像で。 「ほら、二人ともが驚いている」 やんわりと制したコンラートが気に入らないのかヴォルフラムは顔をユーリ陛下から背け、わたしに合わせた。 「それにしても久しいな、。まぁ、血盟城にが来ること事態珍しい、か」 「そうね、まぁ、兄上に折り入ってお話があって」 「で、何の話だ?僕が聞いてやる」 「いや、だからさヴォルフラム さんはギュンターに…」 「お前は黙っていろ!このへやちょこめ!」 「へなちょこ言うなー!!!!」 「はいはい、話が進まないだろ?ヴォルフラムも」 今まで見たことも無いようなアットホームな光景に口元を扇で隠して微笑した。ありえないことを見ているようだ、と。数年前までのヴォルフラムとコンラートはこんな風に話をするなんて有り得ないことだった。ヴォルフラムが一方的に、だったが。これも、魔王陛下のお陰なのだろうか。目を細め、その光景を眺める。 「一人でここまで来るとは姫様の仕業とは思えないね」 「行動力は人生において必要不可欠だわ」 コンラートは相変らず笑みを絶やさない。 「も年頃だからね、話っていうのはそういうことだろ?」 「ご名答。見も知らぬ相手と結婚だなんて… 何を考えているのかしら…」 兄上を巻き込んで陛下とヴォルフラムの言い合いはますます加熱していて、わたしたちの会話なんてちっとも耳に入っていない。これ幸いと私たちは話を進める。 「のことを心配しているんだろ」 「それなら先に兄上の心配をした方が得策だわ、兄上だって結婚してないのに」 「ギュンターには娘が居る」 「ギーゼラはわたしより年上なのよ?ならギーゼラに結婚を勧めた方が…」 正直、分かっている。両親はわたしに嫁がせて安心したいんだろう。 「なら、俺が立候補しようかな」 「え?」 眉をひそめてコンラートを見るとコンラートはまた笑みを浮かべて、わたしの顎を軽く持ち上げた。 「俺はを幸せにするよ」 静謐が崩れ始めた せ い ひ つ が く ず れ は じ め た (あなたが心をこんなにも掻き乱すから) |