目を擦りながらヴォルフラムはベッドに座っていた

 私が気付いて、近づくと笑顔になって抱きついてきた

 少し強い衝撃に私もベッドに倒れ込んで、二人で天蓋を眺めた

 まだ陽も高い位置にある

 少し傾いた太陽、ヴォルフラムは起きたばかり 睡眠で体力を補充したらしい

 私の腕を引っ張って中庭へ

 いろんな花が咲き乱れていて、ヴォルフラムは花壇に近づきしゃがんだ

 「これはね、おかあさまがつくってくれたんだ」

 にこにこと嬉しそうに笑う

 「ぼくの花とおかあさまの花とおおきいおにいさまと、ちいさいおにいさまのお花!」

 「とっても綺麗ね」

 大きく頷く

 「おかあさま、おしごとでいそがしいからあんまり会えないんだ…」

 「うん」

 「けどね、これを見てると淋しくない」

 「ヴォルフはいい子ね」

 ふわふわしてる私と同じ色の髪をよしよしと頭を撫でる。

 私は小さい頃、母親と一緒に過ごした記憶はない。

 というか、むしろ 廊下に掛けられている肖像画でしか、母親に会ったことはない。

 遊び相手は侍女か、たまに会う従兄達。

 父親は仕事で会うことはなく、父親という認識も無かった。

 一人で広い部屋に取り残されて、疎外感、孤独感、孤立感

 眠る前ベッドに座って大きなぬいぐるみを抱きしめて、呼吸が出来なくなった

 「過換気症候群」それが病名。

 ポケットにはいつも紙袋。もう一つのポケットには沢山の薬。

 気休めのものだとしても、私にとってはそれがないと落ち着かない。

 気付いてくれたのは、たった一人。コンラートだけ

 偶々訪れた私の部屋で、苦しみ藻掻いている私を見つけてくれた

 少しだけ、救われた気がした




 「コンラートと会っていたのか」

 ヴォルフと庭で散策していると、後ろから不機嫌な低音が響いた

 思った通り父親で眉間に皺寄せて、明らかに怒っている

 私は何も言えず、黙っていると肯定と見なしたのか私の腕を力一杯握った

 「痛いっ!」

 ヴォルフラムは怯えるようにこちらを見ている

 「お前は何度言えば分かるんだ あんな人間に!」

 「コンラートは魔族です!」

 「薄汚い人間の血が流れているようなやつに触るな!」

 「どうしてあなたにそこまで指図されないといけないのですか…!」

 一瞬力が緩んだ、その隙に腕を引き戻した

 「私とお母様を混同しないでください」

 「繋いでおかないとお前はどこかに行くだろう!道を示さないと踏み外すだろう!」

 大声で我を忘れて叫ぶ、父親

 騒ぎを聞いて駆け付けた侍女に誘導されて私は父親と引き離されて部屋に戻った




 閉まってあった薬を一気に飲んで、頭が、吐き気が、目眩が、そうして意識を失った

 目が覚めないように、祈りながら 床に倒れ込んだ