「姫様、お召し替えは出来ましたか?」
眼鏡の似合う教育係は書類を片手にドアを開けてコルセットで締めている私を見た
「お父上はもうお待ちになっています」
その言葉を聞くと侍女達は手のスピードを急激に上げた
私はばれないように溜息を一つ零した
コルセットでウエストを締め上げ、深い海のような青のような碧色のドレスを着せられた
ふわりふわりと足下まで覆うそのドレスを着ると椅子に座らせられ、髪を結い上げ化粧を施された
胸元に降り注いだ香水が漂い歩く度に鼻を擽る
「魔王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう」
スカートをふんわり持ち上げ、お辞儀をした
そして、視線を移して中央の椅子の横に立っている父を呼んだ
「お父様」
思いの外声が通った、父は私を見るなり目を細めて笑った
「」
父は私に近づき、頬を撫でた
「お前は本当に母親に似て美しい」
ゾクリ、と背中に汗が伝う
私の正面の父の背後の魔王陛下は、眉を顰めた
「お父様、お仕事をなさらないと…」
身を一歩引いて、父の瞳に視線を移して優しく笑った
父も微笑し「夕食で」と残して、魔王陛下の元へ戻った
私はスカートを翻し、その場を後にした
付き添いの侍女を払い、一人で城を歩く
「コンラート!」
見慣れた後ろ姿に声を掛けて、走る
そんなに離れた距離じゃないけれど、少し息が切れた
「」
ふんわりと微笑んで私はしゃがんだ
「ヴォルフも、こんにちは」
「ごきげんうるわしゅう、」
「どうしたんだ、そんなに息を切らせて」
ヴォルフラムはコンラートの袖を握っている
「あのね、もしかして、昨日…」
「あぁ、昨日は寝苦しい夜だったね」
「…ごめん」
「が謝ることじゃない」
ヴォルフラムはきょとんと私たちを見上げている
「辛かったらいつでも頼ればいい、一人で抱え込むのはよくない」
吸い込まれそうな瞳と、かち合う
「今日の夜、コンラートの部屋に行ってもいい?」
「君の父上にばれないようになら、来てもいいよ」
「ありがとう」