前線に行ったという報告を受けたのは、あいつが血盟城を発って2週間後だった。

 最近、姿が見えないとは思っていた。

 僕もあいつも忙しいから、今までだってそういうことはあったし、別に特に何も思っていなかった。

 目まぐるしく過ぎる日々に、逃げていたのかもしれない。

 もしかしたら、なんて考えたくなかった。

 失うことなんてあり得ない。守り抜くと決めたんだ、あの少女を。

 幼い頃から共に生きてきた、自分より幾分小さな幼馴染みを。



 制止をするやつらなんか構わずに重い扉を開けて馬を走らせた。

 向かう先は、がいる最前線。

 地位も低い訳じゃない、十貴族には及ばないが僕の幼馴染みであり彼女の父は軍の指揮官だ。

 なのに何故?

 彼女がわざわざ行くような場所じゃない。

 死に行くようなものなのに、どうして彼女は行ったんだろうか。

 自問自答しているうちに段々腹が立ってきた。

 僕に何も言わずに、何も相談せずに、どうして僕を頼ってくれないんだ!

 いっつも、昔から肝心なことは言わずに頼って欲しい時には頼らない。

 近づくに連れ、顔を顰めるような臭いと赤く赤く緑なんて見あたらない大地。

 何処に居るんだ!

 一瞬、固まった。

 目に留まったのは、剣を突きつけられて動けないでいるで。

 血が出ている、手から足から額から。

 腰に差していただろう剣は放り出されていて彼女は今、丸腰だ。



 「何をしているんだ貴様は!!!」

 彼女の目の前に立っていた男を切り倒してた。

 呆けている彼女を一喝する。

 「さっさと起て!」

 それでも動かないの手を引いて馬に乗せた。

 力無く崩れるように僕に寄りかかる彼女がだんだん冷たくなっていく。

 味方の地に戻って、馬から彼女を下ろして手を握る。

 「!目を開けろ!ッ!」

 どんなに名前を呼んでも目すら開けてくれない彼女に苛立つ。

 握っていた手が力を帯びて、僕の手を握り返してくれた。

 うっすらと目を開けた彼女は薄く微笑んで、それは僕の好きじゃない微笑みで

 何もかも受け入れた様に彼女は笑って

 「また、逢えるから…、泣かないでヴォルフ…」

 小さな声で、所々聞こえなかったけれど彼女はか細い声でそう言った。

 溢れるくらいの涙で彼女が見えない。

 握っていた手がするりと地面に落ちて、彼女が逝ってしまったのだと悟った。

 地面を叩いても、いくら彼女の名前を呼んでも叫んでも、もう笑いかけてくれさえしない。


 また逢えるのなら、逝かないでくれ。


 この時ほど、人間を殺してやりたいと思ったことはない。彼女の命を奪った愚かな人間を。




 僕は君が居ない未来をどう生きればいいんだ