これを、走馬燈と言うのだろうか。

 脳裏を駆けめぐる、今までの出会いと別れと、喜びと悲しみ。

 笑って泣いて怒ってはにかんで、頼りがいのある腕とか大好きな大きな手とか何よりも安心するあの温もりとか。
 君の優しい匂いとか抱き締められたときに耳に掛かる君の吐息とか甘い言葉とか。

 私にどうしろと言うんだろうか。

 ずっと一緒だと、君は言った。

 仲間を見殺しにしてもですか、敵の血に染まってでもですか。私が、穢れてもですか。

 突き立てられた鋭く尖った剣の先、眼下に広がるのは赤く燃えている大地と腐った敵か味方の臭い。

 ニヒルに笑い見下ろしてくる男に、為す術はもうないのでしょうか。

 手が動かない、足は立たない、言うことをきかない。

 逃げろと脳が危険信号を発しているのに、動くことの出来ない哀れな私。

 その矛先が喉元を貫くとき、きっと生暖かい私の血が飛び散って死体はそこに放置されたまま。

 誰にも祈られずに逝くのだろうか。




 「何をしているんだ貴様は!!!」

 罵倒するその声、これは幻聴ですか。

 「さっさと起て!」

 ニヒルに笑っていた目の前の男は既に動くことの出来ない塊と化していて、手を引かれ馬に乗せられた。

 赤く燃えている大地を颯爽と走る、背中に感じる体温は懐かしいあなたで。

 意識を手放していく最期の瞬間まで、耳に残る私を呼ぶ声。

 あなたが祈ってくれるなら、私は逝くことができる。

 この大地で死んでいった仲間と共に。

 さようならは言わない、きっとまた逢えると信じているから。

 永遠なんて私たちにはなかったけれど、あなたを愛しています、永遠に。

 「また、逢えるから…、泣かないでヴォルフ…」

 声にならなかったかもしれない。

 握った手から伝わる体温と、降り注ぐあなたの涙。


 私は、幸せだった。