スラグホーンのどうでもいい呼び出しを終えて寮へ帰る。蜂蜜酒やらパイナップルの砂糖漬けの匂いが充満した部屋に小一時間も居座るはめになり、最上級に機嫌が悪い。未だに鼻に付くあの甘ったるい匂い。ローブにも染み込んでいる気がしてならない。思わず眉間に皺を寄せる。
この前のグリムを見たという騒ぎはグリフィンドールから各寮へ広がり、学校中の噂の種になった。最終的に「死んじゃう」と半泣きになったに皆が口々に「ファングだったんじゃない?」と必死に訴えたこともありも暗闇でちゃんと見えなかったしあれはファングだ、という結論に至ったらしい。傍から見れば迷惑な話だが、実際にアレは俺だったのでファングだと結論付けてくれるのはありがたい。俺たちの間でも暫くは犬の姿になるのを控えるべきだという話になり、実際に先週の満月には寮で留守番だった。

「あー、シリウスお帰りー」
扉を抜けると先ほどいたスラグホーンの部屋に勝るとも劣らない甘ったるい匂いが談話室に立ち込めていて、思わず固まる。
「あぁ、スラグホーンの話は終わったの?リリーは?」
「図書館に寄ってくらしい…」
リーマスとはテーブルにティーセットと匂いの元凶を挟んで紅茶を飲んでいた。
「シリウスも食べる?」
、シリウスは甘いの嫌いなんだよ。人生損してるよね」
リーマスはチョコレートをスコーンに掛けながら言った。は「うわぁ…、可哀相…」と哀れみの目で俺に向ける。
「おまえら、ほんとに好きだな」
呆れた声色のはずなのだが、リーマスとには通じなかったらしい。二人とも褒め言葉と勘違いしているのかニッコリ笑っている。引き攣っている俺の顔に気付きもせず二人はお茶会を楽しんでいる。そんなが少しイライラした。


「はっはん、それでパッドフットくんは元気がないのか」
ジェームズは談話室に入り俺の姿を確認するなり隣に座ってニヤニヤしながら俺を見る。そんなジェームズを一睨みし、視線を読んでいた本に移す。
「青い春だなぁ」
その物言いにお前は老人か、と突っ込みたくなる。
「リリーに振られ続けているお前に言われたくねーよ」
「心外だな!僕はリリーに振られてなんかないよ、リリーは恥ずかしがりやだからね」
ふん、と鼻を鳴らして応える。ジェームズのそのポジティブシンキングを少しは見習いたい。俺は隠れて溜息を吐いた。
「それにしてもリーマスとは仲いいね」
「知らねーよ」
「妬くな妬くな 男の嫉妬は見苦しいぞ」
「妬いてねーよ」
そう言いながら胸のもやもやを晴らすことが出来ないでいる俺は、そこでようやく認識したのかもしれない。
「まぁ、シリウスは好きな子をいじめちゃうタイプだよね」
なんだそれは、と胡散臭いものを見るようにジェームスを見ればジェームズは俺に耳打ちをした。

「恋は先手必勝さ」

万年リリーに振られている男に言われてもいまいち信用できない。ジェームズは良いことを言ったとばかりに俺にガッツポーズをした。
リーマスと楽しそうに笑っているを見て、やっぱりイライラする。

あぁ、そうか 俺はのことが好きなのか。


呆けるようにを見ているとリーマスと目が合った。




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