階段を駆け上がった。レディに合言葉を早口で唱えてそのまま女子寮の自分の部屋に駆け込む。カーテンで締め切られた窓の外には丸い月が浮かんでいて、雲一つない空にはたくさんの星が瞬いている。窓から見下ろすと黒い影が横切った気がしてカーテンを閉めた。ベッドに倒れ込む。仰向けに寝転ぶと、まだ心臓がバクバクと動いているのが分かる。




「だーかーらー!本当なんだってば!」
朝起きて開閉一番にリリーに昨日の出来事を言うと、冷ややかな視線を送られた。
リリーは夢でも見たんじゃないの?と全然私の言うことを信じてくれない。私は頬を膨らせて朝食のオートミールをフォークで刺した。
「なになに?朝からはご機嫌斜めだねぇ」
「リリーが信じてくれないの」
「何を?」
ジェームズがリリーの隣から顔を覗かせて会話に混じる。
ちなみにリーマスは病気の叔母さんのお見舞いに行っていて、ピーターはジェームズとシリウスがスネイプにした悪戯に巻き込まれて入院中だ。
「昨日ね、ちょーっと遅くまで図書館にいたら、」
「今週末提出のレポートまだ出来てないのよ、この子」
「もう!リリーは少し黙ってて!…それで、ほら昨日マダムピンスが休みだったでしょ?」
私は昨日の出来事を思い出しながら離した。
レポートを書いてたらうっかり寝てしまって気が付いたら消灯時間を過ぎてたこと。いつもならマダムピンスに起されるのだが、昨日は偶然彼女が休みでそのまま眠り続けていた。急いで寮に戻ろうとしたらピーブスが前から来て運悪く校庭に出てしまって、そこで
「そこで?」
「そこでね…」
「なんだよ、早く言えよ」
シリウスがフォークで急かす。
「グリムを見たんですって」
リリーがさらっと言った。沈黙が走る。
「あぁ!せっかくのオチを言わないでよ、リリー!」
「だって早くしないと授業始まっちゃうわよ、ほらも早く食べて」
「あ、うん …って、もうおなかいっぱいだから、って違うし!」
「ははは、は面白いなぁ」
ジェームズは完全に面白がってる。
「だってグリムを見たら死んじゃうんだよ!どうしよう!」
「大丈夫だって、なぁシリウス?」
「お前、ほんと馬鹿だな」
シリウスは呆れ返ったような小ばかにしたような声色でしみじみと言った。
「そこがのいいところだよ」
「ジャームズも同意しないで!」
「ほんとに見たんだから!このくらいの大きさで、黒くて…!!!」
リリーはチラッとこっちを見るもののすぐに視線を逸らして今度はコーンフレークを食べていた。ジェームズは悪戯が成功したときのニヤニヤは笑いで、シリウスは呆れて小ばかにしたような表情だ。
「しかもね!すっっっごく可愛かった!」
言った瞬間、シリウスは持っていたフォークを皿に落とした。ジェームズはニヤニヤ笑いが更に増して、リリーはそれを眉間に皺を寄せながら横目で見ていた。
「可愛かったのか…?」
シリウスは落としたフォークを拾って目を泳がせている。
「だって私、犬派だもん!」
は犬派かぁ。じゃあ僕は鹿派かな、リリーはもちろん鹿派だよね?」
「私は猫派よ」
リリーにサラっと斬られても挫けないその精神を分けて欲しい。
「ま、が見たのもきっと犬だったと思うよ?禁じられた森に住む野犬、とかね」
「そうかなぁ」
「きっとね、また校庭に行ったら会えるかもよ?」

「ほら、授業が始まるわ。行きましょう?」
「あ、リリー待って!」

オートミールを胃に押し込んでリリーの後を追う。残されたジェームズとシリウスの会話など露程にも知らずに。



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